ガーデンデザインレッスン

Lesson 9 境界 - フロント・ゲート、エントランス

メインエントランス部分について英国と日本を比較するのはとても難しいことです。英国では前庭と後庭の二つを持つことが普通です。つまり境界部分から玄関ドアまでにはかなり大きなスペースがあるわけです。したがってオーナーはその部分を、ビジターや前を通る人に見せるためのショーケースとして扱います。

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道路側からの眺め


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歩道から見たフロントガーデン
典型的な英国のタウンハウスの写真です。前面のゲートや塀の前には何も置いてありませんね。歩道は歩く人のためなので、通行を妨げるようなものは置けない決まりになっています。
車で前を通るときは、大きなメインツリーしか目に入りませんが、下の写真ではそこにあるものを見ていただけると思います。ここはオーナーが家の中から眺め、また歩道を歩く人も楽しめるように、ホスタ(ギボウシ)のショーガーデンとしてデザインしました。
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英国と日本の敷地の違い



玄関前のスペースがあまりないことから、ガーデニング好きの人が外に向かってフルにその力を発揮するのがこの場所に限られてしまうこととなります。花好きの人にとってはお花で飾られた美しいエントランスにしたい、と思われるのは当然ですね。でも小さなスペースであるからこそ、素敵なイメージを作って家を引き立てるための慎重なデザインとセンスの良さが必要になってくるのです。



このトピックでは、次の5つのカテゴリーに分けて考えたいと思います。
・モダンスタイル
・オープンスタイル
・ゲートエントランス(門扉)
・コンテナ使い
・アーチやパーゴラ




・モダンスタイル

写真最近では流行のスタイルやモダンなもの、変わったデザインの施工が見られるようになりましたが、そういったスタイルを選ぶ場合、家のスタイルとあっているかどうか確認する必要があります。家とのコーディネートといっても、もちろん家の外壁が金属質である場合など、そういった材料とまったく同じものをエクステリアに使うことは難しい場合もあるでしょう。色あわせをすることがコーディネートのキーとなります。たとえばレンガの塀を作ろうとしたときは、家の色に合う色選びをします。
また数色のレンガを使用するのであれば、そのうちの1色が家の外壁の色であることが望ましいでしょう。さらにブロック塀などを塗装するときには、家の外壁の色と合わせるのです。そうすることで塀などの構造物は植物をディスプレイするためのステージとなります。

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ガーデニングコンテスト作品
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・オープンスタイル

写真スペースの関係から、またはオーナーのテイストによってオープンスタイルというエントランスを選ぶ場合があります。そういった場合、植物だけでなく、コンテナなどの高さも含めて立体的な演出が必要になってきます。高さの異なったものを用いると良いのですが、フォーカルポイントは1箇所とします。たとえば独立タイプのメールボックスやインター、表札付きのスタンドなどはそれだけでも良いフォーカルポイントとなり得ますね。

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ガーデニングコンテスト作品
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・ゲートエントランス

写真ゲートは、英国人にとってもステイタスシンボルとして大切なもので、境界部分に設けます。日本では少しセットバックしたスタイルの門扉が多く、その部分がディスプレイエリアとなっています。構造物が花壇込みで作られていることもありますが、そうでない場合はコンテナ(花鉢)を使うこととなります。


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ガーデニングコンテスト作品
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・コンテナ使い

写真コンテナというのは植物と同じくらい大切な要素です。置く場所や植える植物によって、また作りたいイメージによってコンテナを選ぶと良いでしょう。なかには、高価なコンテナを玄関・門周りに置くと、植物ごと盗まれる恐れがあるという話しを聞いたことがあります。そういった場合、植える前にあらかじめ置く場所と鉢底にアンカーを打っておくと盗難を避けることができます。
どこに置くにしても、コンテナの場合植物は、比較的シンプルにまとめるほうがセンス良く見えるし、コンテナも含めてディスプレイの主役になりますよ。

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ガーデニングコンテスト作品
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・アーチとパーゴラ

写真アーチをくぐるときはなにやら厳かな気持ちになりませんか。エントランスにアーチを設けるのでしたらそれとともに、クライミングプランツ(つる性植物)を併用すると良いでしょう。コンテナだけでは作り出せない立体的な構造物として活躍することとなります。植物が生長してアーチを覆うようになれば、それだけで完璧ですからゲート前には何も必要ありませんね。

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ガーデニングコンテスト作品
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エントランスに関するヒント

既存の家のスタイルや外壁の色、素材などとエクステリア、ガーデンアクセサリーなどがコーディネートされていること。


シンプルが一番。フォーカルポイントはひとつで。植物も多用しないこと。


構造を考えて、違ったレベルなどを用いて立体的に。


花色などにも統一性をもたせること。たくさんの色を使いすぎると色同士が喧嘩します。


コンテナや植物、テイストにあったオーナメント(ガーデンアクセサリーなど)を加えること。
レッスン内容
Introduction
はじめに
Lesson 1
境界 - 背景をつくる
Lesson 2
境界 - プライバシーを確保する
Lesson 3
園路 - 庭の中を通る道
Lesson 4
リラクゼーションのためのスペース - ウッドデッキ
Lesson 5
リラクゼーションのためのスペース - パティオ
Lesson 6
リラクゼーションのためのスペース - ガーデンファニチャー(家具類)
Lesson 7
ゾーニング - 植物によるデザイン
Lesson 8
ゾーニング - フォーカルポイントを設ける
Lesson 9
境界 - フロント・ゲート、エントランス
Lesson 10
園路 - 玄関アプローチ
Lesson 11
コンテナガーデニング
Lesson 12
庭の仕上げ


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