Fumikoの季節の植物たち
2005/05
六月と聞けば、日本人は誰でも「梅雨」を思い浮かべるのではないかしら。 湿度が増して蒸し暑いかと思えば梅雨寒などといって寒い日もあり、鬱陶しいイメージがありますね。でもこの時期の雨は植物にとって必要なものですし、雨に咲く花はまた一段と風情があるような気がします。 梅雨といえばアジサイ。 そして同じ湿度を好む植物にシダ類があります。 その中で私好みのアジサイとシダをひとつずつご紹介しますね。


アジサイ'アナベル'(Hydrangea arborescens cv. Annabelle)
画像ユキノシタ科落葉低木。 北米東部から東南部あたりに自生するアナベルは、葉が薄い卵状楕円形をしていてアジサイというよりはノリウツギに近い感じがします。和名はアメリカノリノキといいます。 通常のアジサイの中では、ガクアジサイが好きな私ですが、アナベルは大好き。プリザーブドフラワーや、ドライフラワーにしてリースなどによく使われていますからご存知のかたも多いかもしれませんね。 装飾花の花弁(萼)が集まった大輪の白花は、大きいものでは20〜30cmほどにもなりますが、オオデマリを大きくしたようなこの花、つぼみの頃は緑色をしています。 それがだんだん薄い緑色に変わり、やがて純白に変わってゆくのです。 レースのような美しい花の終わり頃は又すこし緑がかった色になりますが、そのままベージュ色になったものを切らずに残しておいても、冬枯れがドライフラワーのようで美しいものです。 つぼみの頃からだと本当に長い間楽しむことができますよ。 アナベルというのはその年の枝に花がつくため、秋か、春に芽を2〜4個ほど残して芽の上で切ります。弱い枝や細かい枝は切ってしまいましょう。 可憐なその姿に似合わず丈夫で、秋に剪定したときはその切り戻した枝を挿し木で増やせますし、耐寒性も耐暑性もある優れものです。 日当たりから半日陰。 日当たりのよい場合は地面や鉢の根元が乾かないよう気をつけます。腐葉土などでマルチングしておくと良いでしょう。


クジャクシダ(Adiantum pedatum)
画像英名 five-finger fern/ファイブフィンガーファーン、と呼ばれるシダ類。 ホウライシダ科のアジアンタム属、落葉多年草です。 胞子で殖えるコケ植物や藻類と同じように、シダ植物も胞子で増えます。 花をつけないことから隠花植物とも言われるシダ植物の仲間にはトクサ類やマツバラン類、ヒカゲノカズラ類とシダ類がありますが、中でもシダ類は最も進化したグループで根や茎、葉の分化が見られ、管状中心柱という発達した維管束を備えています。 そういえばワラビやゼンマイもシダ植物の仲間ですね。 さて、数あるシダの中でも一番美しいと思うのがこのクジャクシダ(アジアンタム・ペダツム)で、日本にも自生しています。  鮮やかな緑色のやわらかな葉はちょうど孔雀が羽を広げたような形に、掌状に分枝して単羽上に羽片を8〜13対つけます。 また中心の葉柄は光沢がある黒褐色をしていて、緑の葉とのコントラストがとても綺麗です。 クジャクシダには「ヌリバシ」の別名があるのですが、それはこの艶のある葉柄が、漆塗りの箸のようだからですって。 耐陰性も強く、庭園の下草や室内でも楽しめますが、アジアンタムの仲間は空気中の湿度が不足すると葉が縮れやすいため、葉水が必要です。 また株分けや移植は、春芽が伸びる前にしましょう。


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