大場秀章先生の「草木花ないまぜ帳」
今月のテーマ:ミント

ミント昨今、ミントばやりの感がある。料理やその添え物、ティー、お菓子、アロマセラピー用のオイルなど、確かにミントの用途は広い。

ミントはシソ科の草本で、南北両半球の温帯に分布し、約19種がある。多くの種が方向性を持ち、アロマティク・ハーブとして種々の用途に利用されている。日本にはハッカとヒメハッカの2種が自生するほか、5種以上が各地に帰化している。

ミントの名は英名mintによるが、その名の起こりはギリシア語のミンテ(minthe)に求められる。ミントの名は、4千年以上もの歴史をもつ植物名としては最古参のものだ。

ミントには多種あり、かたちも含まれる精油成分も異なるため、用途によって用いられる種は異なる。ペパーミント(peppermint)はセイヨウハッカともいい、ヨーロッパ原産。鼻を刺すような刺激臭をもつメントールの含量が多い。学名はMentha piperita。植物体は無毛で、短い柄のある葉をもつ。チョコレート、アイスクリーム、ミントティー、歯磨、医薬品、タバコの香料などに利用される。これはメンソレータムの主成分の一つで、商品名もミントを含むハッカ属Menthaに由来する。

ペパーミントには栽培品種もかなりあり、シトロンの香りをもつ‘キトラータ’('Citrata')もその一つである。

セイヨウハッカと対照的なのがスペアーミント(Mentha spicata)で、ミドリハッカの日本名がある。この種は、メントールをまったく含まない。そのためペパーミントのような強い刺激臭がなく、菓子の芳香料、ミントソースなどに多様される。

メグサハッカ(学名Mentha pulegium)は、石鹸の香料や飲料水の香り付けに利用する。英名はpennyroyal。

日本産のハッカ(学名はMentha arvensis)は、各地に野生もするが、栽培もされる。地下茎があり、これが分枝して繁殖する。茎は四角形で、細かな毛が生える。葉は楕円形で、茎に対生してつき、長さは3〜8cmになる。晩夏から秋に、茎の上部の葉の腋に多数密集してつく、小さな紅紫色の唇形花が咲く。ハッカ油を採る目的で江戸時代から栽培がされ、文化14(1817)年がその最初という。

観賞を目的に栽培されるミントもある。代表はコルシカミントの名をもつ小形種のメンタ・ルキアニー(Mentha ruquienii)で、グランドカバーなどに適している。



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Profile:

東京大学名誉教授
理学博士
大場 秀章 先生
(おおば ひであき)
ヒマラヤに花を追う−秘境ムスタンの植物− 2005年2月4日、大場秀章先生が中心メンバーの調査チームがネパール王国のムスタン地域で行った現地踏査の成果をまとめた著書「ヒマラヤに花を追う−秘境ムスタンの植物−」の出版を記念して、講演会が開催されました。
東京大学名誉教授。植物分類学の権威であり、ヒマラヤに生育する植物研究の第一人者の大場秀章先生が、植物に関する興味深いコラムを毎月お届けします。大場秀章先生には、当社の緑育成財団が支援している「ネパールムスタン地域花卉資源発掘調査」の中心メンバーとしてご指導いただいています。