真夏日は連続し、しかも暑さも尋常ではない。秋が恋しい。様々な花が競うだけでなく、秋は実の季節でもある。これは春との大きな違いでもある。
昔はどこにでもあった柿も都心では少なくなり、秋の彩りに寂しさが増したようだ。だが、樹一面に散らしたように成る蜜柑の類、ナシ、リンゴ、ブドウ等々の果樹だけでなく、山野の木や草も、やがて来る紅葉の先駆けのように彩り豊かな実を結ぶ。
純黄色をしたカリンは私の好きな果実のひとつだ。カリンは中国中部から古くに渡来したボケと同属の落葉高木で、学名をChaenomeles
sinensisといい、バラ科に分類される。日本では複数の幹が基部から叢生するように仕立てる。花は5数性で、直径3cmほどになり、淡い紅色をした爪のある花弁をもち、4月頃に開く。
カリンに似た果樹にマルメロがある。中央アジア原産で、日本には江戸時代の寛永11年(1634)に伝わったとの記録がある。長野県諏訪地方でよく栽培され、特産品となっている。
カリンもマルメロも、ともにバラ科に属し、形状も類似するが、マルメロの果実は綿毛に被われ、無毛のカリンとの区別は容易だ。また、成木になっても樹皮がカリンのように鱗状に離脱しない。萼片には綿毛が密生するが、カリンのそれは外面が無毛だ。
果実の大きさや色彩では、カリンはマルメロに似るが、類縁性ではボケに近い。雌しべの花柱がカリンではボケ同様に基部でお互いに合着し、マルメロでは分離していることにそれが表れている。
カリンは果肉が硬く、生食は無理だが、ジャムやゼリー、果実酒にもよく、長期間そのままの状態で保存もきく。箪笥に入れ香気を衣類に移したこともある。また果実には咳止めに効く成分が含まれ、カリンの果実酒、蜂蜜漬けやカリン飴などが咳止めに利用される。
また、カリンの材は硬く緻密なだけでなく、色合いもよく光沢があり、床柱に珍重される。さらに、家具やステッキにも利用される。カリンの名はマメ科の同名の樹種に木理が似ていることによる日本名で、中国名はメイサ(榠口)という。
観賞にも適し、北海道中・東部を除く各地で栽培でき、鉢植えや庭植えにされる。
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