ガーデナー訪問記
第9回 田中拓郎さん (新潟県岩船郡)
このコーナー初となる男性ガーデナーの登場です。

新潟県岩船郡の田中さんは、植物の植え込みはもちろん、庭を飾るブロックも型枠から自作するというスーパーDIY派。

見どころいっぱいの庭をご紹介します。
メインテーマは「バラ」
田中さんの庭に足を踏み入れた瞬間、「広い!」と誰もが思うはず。300坪もあるという庭の中央は、手入れされた芝生で占められています。この芝生スペースを取り囲むように植えられているのが、たくさんのバラの花たち。家の前はテラスになっており、赤系の鮮やかなバラアーチがシンボルになっています。

「今から10年ほど前にバラをもらったことがきっかけです。最初はハイブリッドティー(HT)系が多かったのですが、他の植物と合わせることを考えて今ではイングリッシュローズやつるバラへと変化させています。」

と話す田中さん。広い庭スペースに恵まれていることもあり、全体的に日が当たるように設計する工夫も心がけているそうです。訪れた時期はちょうと花のタイミングが終わっていたこともあり満開の様子を収められませんでしたが、ベストシーズンには赤やピンクのバラが一面に咲き揃うさまを芝生の真ん中のイスから眺められるとか。田中さん、贅沢すぎませんか?
写真
写真
写真

なんと!ブロックを自作
バラアーチの根元にある花台に注目。中央に収められている荒く削り出したブロックは、なんと田中さんの自作というから驚き。まず型枠を自作。そしてそこにコンクリートを流し込み、四角いコンクリブロックの完成。仕上げは角をハンマーでたたき出して、荒削りの風合いを出しています。既存の製品ではイマイチ満足できず、「ない物は作ってしまおう」とばかりにDIY精神を発揮した結果というわけです。

このブロックは田中邸のいたる所で目にすることができます。花台、柱、アプローチの敷石・・・など、自作のコンクリブロックが形を変化させながら大活躍中。
写真
写真

アイデア賞の時計台
庭の端にある時計台は、意外な物が使われているアイデア賞モノの一台。地面から立つ支柱はハンギング用ポール、左右の花台をつなぐアームは曲げた鉄筋、時計のひさしは半分にカットした塩ビパイプ・・・とホームセンターで入手できる素材を巧みに組み合わせ、全体をシックな黒に塗装しています。
写真

時計の文字盤にはなんとCDを使い、ライム色のカラーリーフも巻き付いて洋風の庭にマッチする時計台ができ上がりました。
写真

庭づくりの哲学が生きる“日本の森”
洋風に飾られた雰囲気を持つ田中さんの庭ですが、バラアーチの対角にはシダが生い茂り水が流れる「日本の庭」も存在しています。

シダ、コゴミ、ヤブコウジなど越後の里山に自然に生えている植物を植え込み、その中に湧き水を引き込みます。朽ちた木に見たてて流木を配すれば、そこはもう山奥の雰囲気。岩の割れ目から源流の清水が流れ出し、静寂に包まれた原生林そのものです。
写真
「神秘性のある森、大きく包まれるような存在を庭に作りたかったのです。この部分は『もののけ姫』のシシ神が出てくるシーンをイメージしました。」

田中さんはバラやブロックの洋風ガーデンを手がける一方で、自宅の庭づくりには“神社の鎮守の森”の雰囲気を出したいと考えていたそうです。たとえ街中にあったとしても、うっそうとした鎮守の森をくぐればそこはもう静かな世界、目の前がパッと開けて神殿が現れる・・・というようなシーンを想像して手がけた庭は、「和風の庭」「日本庭園」というよりも哲学あふれる“日本の森”になりました。

そんな田中さんの悩みは「フォーマルな洋風ガーデンと神秘性が魅力の日本の森の接点を、どうやって作り込んでいくか」だそうです。こだわりDIY派の田中さんですから、きっとまた驚かせてくれるに違いありません。

(03/8/20)
写真
写真




  新着記事 | バックナンバー | 著者紹介