2005/04 |
百花繚乱の季節の到来といった感のある五月。 花だけでなく、新緑が私たちに与えてくれるすがすがしさは何にも変えがたい喜びがあります。 いったいどれくらいの数の緑があるのかと思えるほど様々な色とトーンの緑の洪水。 その緑色が日に日に色を濃くしてゆくドラマチックな季節ですね。 美しい緑があればこそ花色も引き立つというものです。今回は5月にふさわしい日本のツツジの仲間と、花の女王バラの原種です。 おなじみの植物の美しさを改めて見直しませんか。
リュウキュウツツジ(Rhododendron mucronatum G. Don)
ツツジ科半落葉低木。 日本の春から初夏にかけて山や平地を埋め尽くすのがおなじみのツツジやサツキ。 どこでも見かけるから有難味を感じないかもしれませんが、英国など粘土質の土壌の国では結構苦労してこれを育てています。 弱酸性の日本の土壌ならでは。 ツツジはこの季節、ゴージャスな彩りを日本の景色に与えてくれます。 ツツジとサツキって、どう違うの?と思われる方。 いろいろあるツツジ類の総称をツツジといいますが、サツキの正式な和名はサツキツツジといって、ツツジの仲間なんですよ。 4月半ば頃から咲き始めるものに比べて、旧暦の5月(皐月・さつき)今で言う6月頃咲き始めるものを、江戸時代以降サツキと呼んで区別するようになったようです。 でも、花芽の後に新芽が出るものをツツジ、また新芽の後に花が咲くものをサツキと呼ぶひともいます。 どちらにしても花期の違いから区別できそうですね。 300年も前から栽培されているこのツツジのなかで私が好きなのはこの、別名シロリュウキュウとも呼ばれるリュウキュウツツジ。 キシツツジ(R.ripense
Makino)とモチツツジ(R.macrosepalum Maxim)の雑種に由来する園芸種で、一重で大輪の美しい白花を咲かせます。琉球を経て広まったためこの名前がついたといわれていますが、新潟長岡市には大積の大ツツジという推定樹齢800年の巨木があり、今でもたくさんの花を咲かせています。萌芽力が旺盛で剪定にも耐えますが、絶えず酸素を必要とするため細い根が地表近くで生育する浅根性ですから、根の部分を踏み固めないよう気をつけましょう。
ハマナス(Rosa rugosa Thunb.)
英名 Japanese
rose/ジャパニーズローズ、別名ハマナシ(浜梨)と呼ばれるバラの原種、ハマナスはバラ科バラ属の落葉低木で日本〜東アジア原産。 18世紀にヨーロッパに渡ったハマナスは園芸バラなどとの交配によって多数の園芸品種となりました。 北海道の道花にもなっているこの花は、北海道や、本州(太平洋側は茨城以北、日本海側は島根以北)の海岸線などに自生していましたが、最近防波堤の建設や海岸の環境整備事業などによってハマナスを含む海浜植物は激減していると聞いています。 花の後につける美しい真っ赤な実は甘酸っぱく梨のような味で、そこからハマナシと呼ばれたという説があるようですが、枝には細かい棘がたくさんあるために庭園や切花には不向きといわれます。 でもアイヌの人たちの間ではその棘が魔よけとして信じられ、戸口に挿す風習があったそうですよ。 直径6〜10cmで濃桃色の花は一度見たら忘れられない美しさです。 また「匂いバラ」に属するハマナスの甘くすっきりした香りもとても魅力的だし楕円形で厚みと艶のある葉もステキ。 5月〜8月までと花期も長い上、そのあとは実も楽しめます。 香水やバラ油のほか薬用としても使われるこのハマナス、今では園芸品種として濃桃色のほか、白や赤紫、八重咲きのものもでているそうです。 棘に気をつけながら、鑑賞しましょう。 日当たり、排水性野砂質土で。 秋から冬に剪定します。 |
|