ねこちゃん栄養学 高齢猫の栄養学

加齢が愛猫に及ぼす影響

ヒトと同様に、ネコちゃんも年齢を重ねると少しづつ内臓機能が衰えてきます。こうした加齢による生理的変化のひとつに"安静時代謝量"の鈍化があります。これは自然な変化ではあるのですが、筋肉が衰えて脂肪がつきやすくなり、肥満になりがちです。どれだけのエネルギーが必要なのかはそれぞれのネコちゃんによって異なりますが、7歳から9歳は肥満の危険性がもっとも高い時期です。あなたのネコちゃんがどれだけの食事をしているか、体重は増えていないか、運動はどの程度しているか、よく注意して見てください。そして、加齢に関係した筋肉の衰えをサポートしてあげる手だてを考えましょう。 年をとってもネコちゃんが必要とする栄養素は基本的に若い頃と同じであるという点は頭に入れておいてください。ただ、その量と摂り入れ方を変えていく必要があります。必要とする栄養の量が減り始めたら、栄養素はあくまで最適量に保ちながら、食事を選びましょう。

 

高齢化の徴候

ネコちゃんにはたいてい好きな「定位置」のような場所がありますが、その場所に飛び移るのに以前より苦労するようになった、眠っている時間が長くなった、あるいは、起きていても動きが鈍くなった、さらに皮フの弾力性と柔軟性がなくなり、毛の抜けた箇所ができたり・・・これらは高齢化の明らかな徴候です。また、高齢になると骨が軽くなることもあります。これはひとつにはカルシウムの吸収がうまくいかなくなるためです。こうした変化が表れる平均年齢は、ネコちゃんの場合は統計的には12才前後といわれています。高齢猫には関節炎もよくみられます。それに肥満が重なると大きな問題になることがあります。こうしたもののなかには適切な栄養と医学的治療、そして機能性食品で管理することができます。 高齢になると、視覚・聴覚・味覚などが衰えることもあります。高齢のネコちゃんを抱き上げるときには、驚かさないようにまず自分の手をネコちゃんの目の前に差しだすとよいでしょう。また、近寄る前に名前を呼んであげるのもよい方法です。

 

高齢猫が特に必要とする食事

■毛玉対策
新陳代謝が衰え、脂肪の吸収率が低下しているので、高齢猫はエネルギーレベルが下がって、毛玉ができやすくなるかもしれません。これを防止する助けとして、ビートパルプとセルロースという線維質源を配合した食事がよいでしょう。また、エネルギーレベルを維持するには、1回の食事量を減らして食事の回数を増やすとよいでしょう。


■体重管理
高齢ネコの食事としては、ネコちゃんの防御力を高めたり、ストレスの影響から防ぐサポートとして、高品質の動物性タンパク質をたくさん含み、タウリンのような必須アミノ酸が供給され、抗酸化栄養素を配合した食事が望ましいでしょう。食事中の脂肪の量を減らしつつもネコちゃんの健康全般と、美しいつややかな被毛をサポートするフィッシュオイルがしっかりと含まれた食事が、高齢ネコにはよいでしょう。

 

歯の健康のために

歯と歯肉のケアも高齢猫には欠かせません。ドライフードが歯や口腔衛生を保つことの助けとなるかもしれません。また獣医さんに定期的にみてもらって、口腔衛生処理を行い歯周病の予防措置をしてもらいましょう。

 

高齢のネコちゃんの行動面での変化

高齢に達したネコちゃんによくみられる変化のひとつに、日常生活の決まり事を変えるのを嫌がるようになるということがあります。また、食べ物の好みにも気むずかしくなるかもしれません。味覚と臭覚が衰えるので、はっきりとした香りがあり、味も口に合うものをあげることが必要になるかもしれません。特に、高齢のネコちゃんに対しては低品質のフードはおすすめできません。こうした製品のなかには必要な栄養を十分に配合していないものがある可能性があるからです。 ネコちゃんの動きが鈍くなっているようでしたら、短時間でも運動をするように手助けしてあげると、血行を促進し、筋肉の調子を整え、体重の増加を防ぐのに役立ちます。どの程度の運動をさせるかはネコちゃんの体調にあわせて調整してください。毎日少なくとも2回、15分から30分は遊んであげて、健康的で、定期的な運動をさせてあげましょう。 あなたのネコちゃんの年齢 ― ヒトに換算すると? 年のとり方はそれぞれのネコちゃんによって違いがありますが、ヒトの年齢に換算すると大体何歳になるのかを下の表に示します。

ヒト
1歳
20歳
2歳
24歳
3歳
28歳
4歳
32歳
5歳
36歳
6歳
40歳
7歳
44歳
8歳
48歳
9歳
52歳
10歳
56歳

 



高齢猫の健康状態

高齢のネコちゃんは特別な栄養要求があります。肥満や筋肉の衰えといった問題が、高齢のネコちゃんにはたびたび生じます。そのような体調問題の管理のために、特別な栄養がサポートすることが研究結果からわかっています。

 

肥満

高齢ネコちゃんは代謝率が変化するので、カロリー消費が落ち、体重が増加しやすいものです。成猫の健康維持に必要なレベルよりも脂肪分とカロリーを減らした食事が、ネコちゃんの健康にはよりよいでしょう。

 

筋肉の衰え

タンパク質は筋肉の組織を構成しています。筋肉の組織を保ち、その力強さと動きを維持するにはタンパク質が重要な役割を果たします。最近のアイムス社の研 究では、高齢のネコちゃんで、高タンパク質の食事をとっていれば筋肉質量を維持できることがわかっています。筋肉の維持に最適なタンパク質量を含んだ食事 を与えてあげることが、あなたの大切なネコちゃんの活動力をサポートすることにつながるのです。 さらにすべての栄養素をバランスよく含み、ビタミン豊富なフィッシュオイルに見られるような必須脂肪酸を配合した食事であれば、被毛の健康や、体に本来備わっている自然治癒の過程をサポートする上でも役に立ちます。

猫の肥満

ネコちゃんの肥満

肥満したネコちゃんはあまり見栄えのよくないものです。場所をふさぎ、動きがにぶく、自分でグルーミングすることもできません。運動能力はめっきり落ち、皮フ病にもかかりやすくなります。また、糖尿病にかかる危険性も増大しますし、外科手術や麻酔の際のリスクも高くなります。 動物は普通、必要以上のカロリーをとり続けると肥満になります。食事の与えすぎや運動不足などが主な肥満の原因ですが、このほかには、妊娠、環境、体質、年齢、遺伝素質などの要因があげられます。

 

体の状態を把握する

ネコちゃんの体の状態を知ることは、栄養の状態を知るための大切な一歩であり、肥満を見つけるのに役立ちます。この項ではネコちゃんのボディコンディションの図表を用意しました。説明に従って、ネコちゃんの体の状態を観察してあげてください。

 

獣医さんに見せる

ネコちゃんが太りぎみ、あるいは肥満の疑いが強い場合は、必ず獣医さんによる総合的な診断が必要になります。なぜなら、その肥満の原因が単なる食べ過ぎや運動不足ではなく、健康上の理由によるものかもしれないからです。減量・体重管理プログラムを始める前に、必ずこの点を見極めてください。

 

方向転換

肥満は治すより防ぐほうが簡単です。ただし肥満になっても取り返しがつかないということはありません。長い時間辛抱できる強い意志があれば、元に戻すことは可能です。運動量をふやし、習慣を改善し(あなたも、ネコちゃんも!)、カロリー制限をすることが、ネコちゃんの肥満に立ち向かう武器となるのです。

 

では始めましょう!

まずネコちゃんの運動量を増やします。手始めに、ネコちゃんが気軽によじ登れるキャットツリーを用意してください。次に、ネコちゃんが走って追いかけることができるものを投げてやりましょう。あるオーナー様は1粒ずつドライフードを投げる方法を工夫しましたが、そういう遊びもよいでしょう。散歩に連れていくことも手でしょう。ほとんどのネコちゃんはリードでの散歩に慣れれば、それを楽しむようになります。いろいろと想像力を働かせてください。ただし注意が必要な場合もあります。太ったネコちゃんを急激に運動させてくたびれさせたり体温を上げすぎたり息切れさせたりしないでください。高齢のネコちゃんに激しい運動をさせてはいけないこともお忘れなく。 愛情の印におやつをあげるよりも、遊んだりグルーミングをしたり、なでたり、話しかけたりしましょう。ヒトの食事中におねだりをするネコちゃんに抵抗できないようなら、その時間はネコちゃんを別の部屋に移しましょう。 家にネコちゃんが複数いる場合は、常に食事をめぐる競争が起こり、その戦いの勝者が肥満してしまうことがあります。この場合はできれば食事時間にネコちゃん同士を離すようにしましょう。

 

食事の管理

ネコちゃんはエネルギー源として第一に脂肪を使います。生体が必要とする以上のエネルギー(カロリー)を摂取するネコちゃんは、その余分なエネルギーを脂肪の形で蓄積します。太りぎみや肥満のネコちゃんは、摂取カロリーが炭水化物の形の場合よりも脂肪の形の場合の方が簡単に脂肪を蓄積します。脂肪を消化の高い炭水化物で代替する食事は優れた低カロリー食です。消化のよい炭水化物のカロリーは同量の脂肪の半分以下ですし、消化しにくい線維質も含んでいません。こうしたフードの場合にも給与量のコントロールが必要ですが、普通のフードを与えているときほど厳しくする必要はないでしょう。 たとえ減量をしている時でも、ネコちゃんの食事に関しては通常の線維質量を守ることが大切です。ネコちゃんの減量用をうたった高線維質フードは避けましょう。高線維質フードは多くの栄養素の消化と吸収を妨げます。それに加え、栄養的に質の劣る食事であるばかりか、排便回数や糞便量を増やし、皮フや被毛の状態を悪化させる恐れがあります。

 

まず初めに

ネコちゃんの減量プログラムは、まずカロリー摂取量を従来の摂取量の25%減らし、次に1週間につき1%の減量を達成できるようになるまで、2週間〜3週間ごとに10%までの量を減らしていきましょう。あなたのネコちゃんが5kgである場合1%の減量とは約50gを意味します。 1日に1回、大量の食事を与えている場合や、食べ物をいつでも出している場合は、1日あたりの量を何回かに分けて(少なくとも1日2回)出すようにしてください。食事を出して30分後には残りものをすべて片付けるようにしてください。

 

急がずゆっくりと

食事はゆっくりと切り替えるようにしましょう。前のフードに新しいフードを混ぜ、その割合を1週間かけて徐々に増やしていきます。この方法ならば新しいフードを無理なく好むようになり、消化器に問題が起こるというリスクも減らせます。 ネコちゃんの減量にはとりわけゆっくりしたプロセスが必要ですから、辛抱強く続けましょう。摂取する食べ物を急激に減らすと、ネコちゃんが肝リピドーシス(脂肪肝)という深刻な肝臓の疾患にかかる危険性があります。 減量作戦はうまくいかなかったり停滞することもあります。肥満したネコちゃんが15%の減量に成功するには少なくとも4か月かかります。体重が増えてしまったり、停滞したりしたら、ネコちゃんの体の状態を調べなおし、そこから再出発しましょう。

 

体重管理プログラムを始めるためのヒント

  • 体重管理プログラムを始める前に獣医さんの検診を受けます。
  • 赤ちゃん用のはかりを使って2週間ごとにネコちゃんの体重測定を行います。
  • 低脂肪、高炭水化物のフードで脂肪から摂取されるカロリーを制限します。
  • おやつをあげるのをやめます。
  • ネコちゃんの運動量を増やします。
  • ネコちゃんに1粒ずつドライフードを投げて、遊びながら食事をさせてみましょう。
  • 1日の食事を少量ずつ何回かにわけましょう。
  • 1週間に元の体重の1%〜1.5%以上減量してはいけません。
  • 辛抱強く着実にやりましょう!
わんにゃん栄養学