子犬を迎えたら

社会性と順応性

子犬が、自信をもって社会と協調できる立派な成犬になるためには、ヒトの子どもと同様、積極的にいろいろな経験を積むことが必要です。そのしつけの一部として、子犬は、他のワンちゃん、ヒトの子どもや大人と共に生きることを学び、さらに、見慣れない風景、聞き慣れない音など、日常生活の一部である様々な経験を受け入れることを学ばなければなりません。

 

発育の各段階

子犬の発育にはいくつかの成長段階があります。最初のワンちゃんの社会性は、一緒に生まれた子犬たちとの関係から始まります。生後7週間〜8週間で少し自立心ができ、周囲の状況を観察する動きが出てきます。この段階が新しい子犬を家に連れてくるには最適の時期です。生後8週間〜10週間になると恐れの時期になります。この時期にはワンちゃんはあなたにしがみついて離れませんし、ちょっとの物音にもすぐびっくりします。この時期には、大きな音をたてたり、驚かせたりすることは避けてください。恐怖を感じさせないでこの時期を過ごさせましょう。生後10週間くらいで恐れの時期を過ぎると、ヒトでいう幼年期に入ります。探求心が出て歩き回る範囲も少し広くなります。この頃は、新しい経験を重ねるには最適の時期です!

そして幼年期が終わると、子犬はヒトでいう思春期を迎えます。目を離さないで注意深く見てやってください。子犬によっては生後4〜5カ月で第2の恐れの時期を体験するワンちゃんもいます。子犬の社会性の教育にあたっては、いつでも頭の隅にワンちゃんの健康のことを置いておくことをお忘れなく。予防接種が済むまでは、伝染性のある致命的な病気のパルボウイルス感染症に罹る恐れもあります。ですから、予防注射が完全に終わるまでは、子犬を公共の場所に連れて行かないようにしましょう。子犬の健康上、他にどんな危険があるのかを獣医さんによく相談してください。

 

他のワンちゃんとの協調

ワンちゃんにはワンちゃんの言語があります。体の姿勢、顔の表情、吠え声などで、ワンちゃん同士は恐怖、怒り、攻撃、降伏、遊び心などの気持ちが通じ合います。子犬がほかのワンちゃんたちと一緒に育てば、ワンちゃんの言葉を覚え自由に意志の疎通がはかれます。1頭だけで育った場合、子犬はほかのワンちゃんの合図がわからず誤解したり、他の動物を怒らせるようなシグナルを心にもなく発したりする恐れがあります。また、子犬もヒトの子どもと同様、適切な行儀作法のしつけが必要です。子犬たちが遊んでいて、ふざけて強く咬んだりし過ぎると他の子犬が悲鳴をあげます。他の子犬の「ママ」にしつこく飛びついたりすると、うなり声で追っ払われたりかみつかれたりすることもあります。こうして子犬たちは遊びの中で、やってもよい限度を学んでいくのです。あなたの子犬にこうした大切な学びの経験を与えるにはかかりつけの獣医さんに聞いて助言してもらったり、新しいワンちゃんのオーナー様を集めて、子犬たちの遊び仲間を作るのも1つの方法です。こうした社会性を学んでいる間、子犬たちを自由に遊ばせましょう。しかし遊びが過ぎて攻撃的にならないよう、特に大きさの違うワンちゃん達が混じっている場合にはよく監視して遊ばせる必要があります。

あなたの子犬と他のワンちゃんとの社会性の学習は、同じ母犬から一緒に生まれた子犬の中から始まり、(もし可能ならば)ヒトでいう幼年期、思春期と発育の過程を通じて続くものです。社会性訓練のよく行き届いた子犬は、信頼してほかのワンちゃん達といっしょに遊ばせられる成犬に育つことでしょう。社会性訓練は、攻撃性の強い犬種や支配心の強い犬種ほど大切だと思ってください。しかし遊びの間にあなたの子犬の攻撃性が強すぎたり、あるいは臆病すぎたりする場合は、問題化する前に直せるかどうか、専門の訓練士さんに援助を頼むと良いかもしれません。

 

他のペットとの協調

多くのワンちゃんたちにとって、犬以外のペットとの共生は、ほかのワンちゃんと協調を図るよりずっと問題が多いのです。特にチョロチョロ走りまわる小動物の場合、特別な問題があります(ワンちゃんの「狩猟本能」呼び起こしかねないからです)。ハムスターやウサギなどの小動物は、どんな犬種であれ、接触のチャンスを作らない方が良いでしょう。 ネコちゃんや大きな動物の場合は、危険性は小さいです。こうしたペットと一緒に飼う場合には、子犬が小さいうちに会わせておいた方がよいでしょう。小動物と一緒の時はよく監視して、子犬が行儀よくしていたら、ほめたりご褒美におやつをあげます。(他のペットにとっても楽しい経験となるよう心遣いを忘れずに…)。 たいていの犬種は、ネコちゃんやその他のペットたちと一緒に育てば共存生活も受け入れられます。しかし、強い狩猟本能をもつ犬種によっては、常に危険が伴います。家の中で他の動物と一緒に飼うことが最初から分かっているときは、慎重に犬種を選んだ方が安全です。

 

ヒトとの協調

ワンちゃんたちは、ヒトの世界で生活せざるを得ない以上、ヒトとの協調はとても大切なことです。小さいうちにたくさんの見知らぬ人々と積極的に接触させ、お行儀よくできたときはほめてご褒美をあげてください。こうすれば、大変しつけのよいワンちゃんに育つ助けになります。お友達を家に呼んで、子犬と遊んでもらいましょう。そのときお友達が大人の方でしたら、子犬のそばではしゃがんでもらい、急な動作をするのを避けるよう頼みます。子犬から見ればヒトは巨大に見えるはずですから。あなたにお子様がいらっしゃらなければ、お友達のお子様や近所の子どもたちにも遊びに来てもらいましょう。(子どもたちには子犬の扱い方を教えておき、遊んでいるときは常にあなたが監視します)。周囲にヒトの子どもがいない環境で育った子犬は、成犬になったとき子どもたちに向かって攻撃性を押さえずに行動をとることがあります。小さい子どもが走り回ったりかん高い声で騒いだりすると、慣れなていないワンちゃんによっては狩猟本能が目を覚ますことがあるのです。犬種によっては、狩猟本能が強すぎて子どもたちと協調できない場合がありますが、犬種によってはとてもよい関係をもてる場合もあります。家に小さなお子様がいらっしゃるとき、犬種選びは重要なポイントになります。

子犬の予防接種が全部済んだら、公園など公共の場所に連れて行って、子犬を可愛がってくれる人々に会ってもらいましょう。いろいろな年齢の人々、警察官など制服を着た人々にも会わせましょう。ワンちゃんたちは「見慣れない人」に接したとき用心深くなるものです。あなたは、子犬に人々と気持ちよく接すること、人前で行儀よくすることを教えていることをお忘れなく。これは大事なことです。子犬が噛んだり跳んだりするのは可愛いものですが、30kgもあるような大きな成犬では話が違います。 成犬になったときにワンちゃんにしてほしくないことは、子犬にもさせてはいけません。成犬になってからでもしてほしいと思うことを子犬に教えてください。やってほしくない行動は、すぐにやめさせることが大切です。望ましくない行為があったときは、やさしく、しかし断固として叱ることです。そうすれば行儀のよい成犬になれます。こうした社会性の訓練の行き届いたワンちゃんは、いい番犬にもなります。訪ねて来てほしい人と望ましくない人とを区別できる、利口なワンちゃんになるからです。

 

新しい経験への対処

あなたの新しい子犬にとって、毎日の経験は驚きの連続です。キッチンで鍋が落っこちた、掃除機がウナリをあげた、車に乗ったなどのことが、やり方を誤ればワンちゃんの心の傷となって、それ以後それをいやがるようになることもあります。 これを防ぐため、思いつく限りの新たな経験を子犬にさせてください。経験をより建設的なものにするため、その都度ご褒美をあげたり励ましたりしましょう。そしてワンちゃんが恐怖心を持たないようしてやるのです。(生後8週間〜10週間の恐れの時期には、怖くない経験から始めて子犬を驚かすようなことは避けましょう)。

たとえば、掃除機に慣れさせるときは、まだスイッチを入れないでおいて子犬を呼び、触ったりくんくん臭いを嗅がせたりします。子犬が掃除機に触れて、こうした行為ができたらほめてごほうびを与えます。それから子犬がびっくりしない程度に離れたころを見計らって、掃除機のスイッチを入れます。掃除機の傍に立って子犬を呼んでください。子犬が近づいたら、ほめてご褒美をあげます。だんだんと子犬を掃除機の傍に寄せます。何回かこれを繰り返しますが、そのたびに十分ほめてご褒美をあげます。すると子犬はすぐに掃除機を怖がらなくなります。

ワンちゃんを車に慣れさせるには、最初はあなたが一緒に乗って車の中で一緒に遊ぶかご褒美を与えます。 つぎの「外出」の際、誰かにワンちゃんを抱っこしてもらい、ほんの数km車を動かしてからほめてやります。ワンちゃんが車酔いしない程度の数分間のドライブをします。あとでよく遊んであげて、車に乗ることと楽しい思い出が結びつくようにします。

子犬と一緒にする他の経験には、サークルや犬舎の中に入る、リードをつけて歩く、足ざわりの違う地面(タイル、カーペット、砂利道、砂、芝生、雪など)を歩く、階段を登ったりドアの呼び鈴や電話の音を聞く、などです。やり方が悪いと後であなたとワンちゃん、両方の心の傷となってしまうような難しい経験にも、ご褒美作戦で挑戦してみましょう! 子犬にブラッシングするときもご褒美方式でやりましょう。 風呂に入れる、爪を切るなども同じです。子犬の足や耳、尾の手入れや口を開けさせることも抵抗なくできるよう試してください。(しつけは非常に短い時間で始めて、出来たらほめたり、遊んでやったりご褒美を与えることで経験が楽しいものとなることを忘れずに。)このワンちゃんとの基礎準備があれば、獣医さんが診察するときにもスムーズに診察してもらえます。新しい経験を楽しく建設的なものとして根づかせるよう心がけてください。あなたのワンちゃんは必ず、信頼できる楽しいお友達になりますよ。

わんにゃん栄養学