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大場秀章先生の「草木花ないまぜ帳」
 
 
テーマ: ゼンマイ

ゼンマイ  前月、中国の海南島を訪ねた。島の中央の山岳地帯に住む少数民族の生活や農耕を調べる調査に同行した。国の近代化政策で昔ながらの生活にも変化が生じているとのことだったが、それでもいまなお多くの野生植物を生活に利用し、食用としている。

 その調査中に日本の山菜ブームを思い浮かべずにはいられなかった。いまや日本での山菜は嗜好品としてのものであるが、山菜に寄せる愛着は山菜をかつては野菜として食していたことのなごりに思えたからだ。

 花をもたないシダ植物も山菜に利用される。その日本での代表はワラビ、ゼンマイ、クサソテツ、スギナ(ツクシ)だろうか。海南島でよく食べるというクワレシダも日本でも食用とされたが、もともと九州南部以南に分布が限られていたので、全国的には知られてはいない。クサソテツは庭に植える観葉植物でもあるが、その若芽はコゴミと称して珍重される。このシダの分布は広くヨーロッパや北アメリカにあり、彼地でも若芽はサラダなどとして食用にされる。

 シダ類は平面的で多くは規則的に裂ける葉をもち、多くは陰湿な場所に生えている。胞子によって繁殖し、まだ種子をつくる段階前の植物である。このように植物の進化の歴史上では、種子をつくり、花を開き果実をもつ被子植物よりも古い系統に属しているが、現在の地球環境下でも適応力があるせいか、世界に1万ほどの種が記録されている。シダ類は咲かせるべき花ももたない地味な植物には違いないが、林下に群生する風情や熱帯でのヤシにも似た木生シダの繁茂した景観は壮観ですらある。
ゼンマイは樹陰などの湿った場所を好むが、羽状に切れ込む葉をもったヤマドリゼンマイやオニゼンマイは日当たりもよい湿原や湿った草地に群生する。ところによってはヤマドリゼンマイの若芽も食用とするが、味はゼンマイよりも劣るという。

 ゼンマイは学名をOsmunda japonicaという、シダ類の1種で、ゼンマイ科に分類される。光合成という生産活動はせず、生殖の役目を担う胞子を作り出す胞子葉と、胞子生産はせずもっぱら光合成により栄養分を稼ぐ栄養葉の別がある。春先の芽立ちでは、はじめに胞子葉が現れ、続いて栄養葉が芽立ちする。食用とするのはもっぱら栄養葉で、胞子葉は食べない。一般には食べない胞子葉を男ゼンマイ、栄養葉を女ゼンマイと呼び、これを区別している。

 ランのような着生植物を栽培する人はゼンマイの属名であるOsmundaはよく知られていよう。というのはゼンマイの地下部(これを根茎、rhizomeという)は、ヘゴ板同様に着生植物を栽培するのに広く用いられているからだ。こうした目的にかつて日本からヨーロッパにゼンマイの根茎が相当量輸出されたこともあったのである。
しかし、最近はゼンマイを若芽だけで知っている人の方が多い。十分に生長したゼンマイの葉は大きいものでは長さ1メートルにもなる。2回羽状複葉といって、その葉は2回も切れ込んでいる。2回というのは、まずその葉が中央の軸の左右に羽片と呼ぶパーツに分けられる。そして次にその羽片が、小羽片というパーツにさらに分かれる。それで都合2回というわけである。シダ類にはゼンマイよりもさらに回数多く分裂する葉をもつ種が多い。ゼンマイの小羽片はずんぐりした長円形で、先は円味をおびている。渓流に沿って分布するゼンマイにヤシャゼンマイがある。この種の小羽片は幅狭く、先もやや尖りぎみになる。これに対してヤマドリゼンマイとオニゼンマイでは羽片が完全に分裂してしまうことはなく、深く裂けるだけに過ぎない。

 採ったゼンマイを食べるには茹でて灰汁抜きをしなくてはならないが、その前に若芽の基部に生えた綿毛を取り除いてやらねばならない。食べるには面倒なこの綿毛もかつては重要な資源として利用されていた。そのひとつは、この綿毛を集めて綿の代りとして袋に詰め使った。つまりゼンマイ綿である。ゼンマイが豊富に生えていた新潟や福島県などではこうしてつくられた座布団や布団が資料館などに展示されている。

 もうひとつの利用はこの綿毛を使って糸とし、それを織って布地としたのである。なかでもゼンマイ紬は名高い。いまでも伝統工芸品としてこれが織られていると聞くが、私はみていない。最近ではゼンマイから工業的に繊維をつくり、これを織った布地が豪雪で知られた塩沢でつくられている。

 捨てるところもないほどの完璧な資源化がなされていたことに、驚嘆せずにはいられない。

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Profile:

東京大学名誉教授
理学博士
大場 秀章 先生
(おおば ひであき)
東京大学名誉教授。植物分類学の権威であり、ヒマラヤに生育する植物研究の第一人者の大場秀章先生が、植物に関する興味深いコラムを毎月お届けします。大場秀章先生には、当社の緑育成財団が支援している「ネパールムスタン地域花卉資源発掘調査」の中心メンバーとしてご指導いただいています。



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