社会福祉の目的で英国のオープンガーデンは始まった

そのプライベートなガーデンを見る機会を与えてくれた活動があります。
約80年ほど前に、「女王陛下の看護協会」のエルジー・ワッグという女性が、
当時一人1シリングの入園料でプライベートガーデンを公開してその収益を
社会福祉のための基金とすることを発案しました。

まずは看護婦さんたちの援助のため、ガーデンのオーナー達に呼びかけて庭を公開
してもらったのが始まりです。その運動はThe N.G.S(ナショナル・ガーデンズ・スキーム)
として広がり、今ではナショナルトラストや英国王立園芸協会などと並ぶ大きな
組織となりました。様々なスタイルと規模の約3500の庭から、年間およそ3億6000万円
もの収益を、12のチャリティ団体へ寄付する巨大な慈善団体となっています。
イエローブックと呼ばれる本を発行し、公開庭園の情報が全て載っており、今週末、
何処に行けばオープンガーデンがあるかなどを知ることができます。
ある一定の条件を満たさないとNGSのガーデンとして認めてもらえないため、
英国人にとってこのイエローブックに載ることは、庭のオーナにとってはとても誇らしく、
名誉なことといえるでしょう。公開庭園の多くは一年のうち、一度の週末などを公開しており、
オーナーはそのために日頃一生懸命庭の手入れをします。

1シリングだった入園料は、今では凡そ2ポンド(500円くらい)になっていますが、
庭では飲み物やビスケットを出してもらえるところもあり、中にはオーナー手作りの
ケーキや庭で育てた花苗などが売られていたりします。そこで気の合う友人ができたり、
お互いに情報交換したり、と皆長い時間楽しんでいます。

NGSのオープンガーデン。庭でクラシック音楽を楽しむ人たち

 

庭好きの英国人が、よその人の作った庭を楽しめるだけでなく、そうすることが社会貢献となる素晴らしい活動だということが
この組織を飛躍的に伸ばしたのだと思います。
そのほか英国赤十字などでもオープンガーデンの活動を行っていますが、どちらにしても、チャリティが目的です。
日本にも社団法人The N.G.Sジャパンという英国の支部的組織があり、庭園福祉活動として地道な活動を長く続けています。
日本でも最近ではオープンガーデンの活動が盛んになってきたように思いますが、活動の目的が社会貢献ということになれば、
更に飛躍するような気がします。日本でもこれからの方向性となる運動かもしれませんね。

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