大場秀章先生の「草木花ないまぜ帳」 |
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テーマ: タケノコ |
タケの仲間が熱帯を代表する植物のひとつだということは存外知られていない。私自身、南アメリカのパラナ川の下流で鬱蒼と繁る竹林に出会ったときは驚いた。そのしなやかな稈(茎)や枝の間をホエザルの群れが、うなるように吼え叫びながら去っていった。また、アフリカや東南アジアではゾウの好物のひとつがタケだと聞いて、耳を疑ったことも思い出す。
日本もとくに西日本ではいたるところ竹林が広がる。モウソウチクやマダケ、とくにメダケでは足の踏み場もないほどに密生した竹やぶとなる。 熱帯の植物であるタケだが、日本では温帯地域にも適応し、火山地域を中心に各地に侵出して広大なササ原を生み出してもいる。ササは小形化したタケで、北海道東北部の東千島を北限とする。 ゾウやパンダばかりでない。人もタケやササを好んで食べる。日本では食用にするのはもっぱらタケノコという、若くて軟らかな芽の部分である。 モウソウチクやマダケ、ハチク、それにササの仲間であるネマガリダケなどは、横にはう地下茎をもち、毎年地中に新芽を生じ、それが生長し地上の茎となる。タケではすべて、ササも多くの種は新芽は地中につくられる。毎春この地中に生じた新芽が地表に姿を現す直前直後に掘り取って食用とするのがいわゆるタケノコである。 タケノコに特徴的なのは新芽が幾重にも厚い皮に包まれていることだ。もちろん食用にするにはこの皮を剥いてやる。皮はふつう捨てられてしまうが、昔はこれに梅干などを挟んで口にしたものだ。青臭いが、かすかな香ばしさもあり、今でも懐かしい。 タケノコの皮を一枚づつ剥いていくように、少しずつ売り食いすることを筍生活というが、あの皮はアスパラガスの節のところにある鱗片状の付属物に較べられよう。付属物が間隔を置いてついている様子は、茎が伸長したためでタケノコでも放っておけばそうなる。竹林を歩くと、生長した茎から落下した無数の皮を目にすることができる。昔は竹皮は商品を包むのに重宝されたが、今日では羊羹のような特殊な品物の包装にしか用いられなくなった。 タケノコはアスパラガスに似ている。ともに単子葉植物で、地中に新芽を生じる。よくタケやササが木か草かとを問われることがある。木は冬芽のような休眠芽が地上にでき、茎が木質化するのが特徴だ。タケやササの茎は硬く、木質化しているのだが、休眠芽が地中にできる。半分は木のようで、半分は草のような植物といえるが、まさにタケやササの草的特徴を代表するのがタケノコだ。 |
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