大場秀章先生の「草木花ないまぜ帳」 |
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テーマ: ブルーベリー |
スグリやキイチゴなどの液果をいう言葉であるベリー(berry)が日本語化している。ベリーにはサクランボやアンズの果実のような核のある果実は含まれないが、日本語としてのベリーの範囲からはブドウあるいはトマトのような果菜の液果も外されているようだ。
日本語のベリーを代表するのはブルーベリーだろう。ブルーベリーはツツジ科スノキ属(Vaccinium)のハイブッシュ・ブルーベリーやそれに似た数種の低木、それらになる青や青紫あるいは黒紫色の液果をいう。 ブルーベリーは1951年頃に一度日本に導入されたが、その時は一般に普及せずに終った。1990年代になり巷での果実あるいは健康食品としてのブルーベリーへの関心が広がり、それにともない一部で栽培もされるようになった。 ブルーベリーを含むスノキ属は北半球の熱帯から寒帯まで広く分布し、およそ300種があり、日本にも常緑性シャシャンポ、矮性低木のコケモモ、高さ3mにもなる落葉広葉低木のナツハゼ、ブルーベリー類に含めることもできるクロマメノキなど、19種が自生する。 クロマメノキ(Vaccinium uliginosum)は、北半球の冷温帯から亜寒帯に広く分布し、日本では中部以北に産する。矮性の低木で、高さは1mを超えることなく、密生し、倒卵形または楕円形で、長さ2cm内外の葉をもち、初夏に黄緑色の花をつける。液果は直径1cmほどで、黒紫色に熟す。長野県浅間山に多産し、地元の人たちがアサマブドウと称しジャムなどにして販売した。 スノキ属のなかで、ブルーベリーと総称される一群はアメリカ合衆国やカナダなどで広い範囲で栽培され、ジャムやパイなどの菓子の材料とされる。両国ではブルーベリーへの関心が高く、栽培されるだけではなく野生種の果実採取も盛んで、ときにはそうして採取されたものが市場に出回ることさえあるほどだ。 日本で栽培されているのは、主にハイブッシュ・ブルーベリーとラビットアイ・ブルーベリーで、双方には栽培品種もいくつかあり、市販されている。落葉時の紅葉も目立ち花木として鑑賞に供することもでき、そのうえ熟した果実を採取して生食やジャムなどに利用できるのも魅力であろう。 ハイブッシュ・ブルーベリーは学名をVaccinium corymbosumといい、アメリカ合衆国東海岸側のメーン州からルイジアナ州を経てフロリダ州北部にかけて広く分布する。栽培も広範囲で行なわれ、アメリカ合衆国では最も栽培面積が広い。落葉低木で、高さは3mにもなる。葉は卵形または楕円形で、長さ6cmになり、紅色を帯びた白色の花を開き、青色または黒青色で、粉白のある直径1cmほどの液果を結ぶ。 日本で栽培される優良な栽培品種に次のものがある。アーリーブルー('Earliblue’)は早生で、耐寒性が強い。ベリーは鮮青色で、香りが強い。コリンズ('Collins’)もこれに似る。コウヴィル('Coville’)は晩生で、大粒で青色の果実をもち、香り酸味ともに強い。レイトブルー('Lateblue’)もそれに似るが、一層の晩生タイプである。バークリー('Berkeley’)は有名だが、果実は鮮やかな青色大粒になるが、香りに乏しい。同じ中生のブルーレイ('Blueray’)は香りが強く良質である。 ラビットアイ・ブルーベリーは学名をVaccinium asheiといい、アメリカ合衆国東海岸側のジョージア州からルイジアナ、アラバマ州を経てフロリダ州北西部に分布している。落葉あるいは半常緑の低木で、高さは普通1m前後だが、6mに達することがある。葉は楕円形または卵形で、長さ6cmほど。花は淡紅色。果実は黒熟し、直径1.5cmほどで、黒く熟し、粉白をもつ。日本でみる栽培品種に早生のウッダード('Woodard’)が芳香のある鮮青色の果実をつける。中生では香りや色ともティフブルー(‘Tifblue’)が優れていよう。 |
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