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大場秀章先生の「草木花ないまぜ帳」
 
 
テーマ: ミョウガ

ミョウガ  しゃり感と芳香味がたまらない。ミョウガはいまや日本食に欠かせない食材である。食材としてのミョウガには「花ミョウガ」と「ミョウガ竹」があるが、花ミョウガの方が普及している。




 ミョウガはショウガによく似ている。地中にはショウガによく似た横走する節くれだった根茎をもつ。茎葉は高さ40から80cmになり、ショウガに似た披針形の葉を間隔をおいて出す。ミョウガ竹はまだ葉が展開する前の茎葉を軟化促成栽培したものである。

 一方、花ミョウガは、根茎の先端に生じる花序だ。食するのは未開花状態のもので、食の主体となる淡い紅紫色をした葉状の部分は苞に当る。花ミョウガを縦切りにすると葉状の苞が多数あり、それぞれのつけ根に小さな花の蕾ができていることに気付かれるだろう。

 ミョウガの花は一日花で、毎日夕刻には萎んでしまう。いったん開花すると日毎に苞の腋から新しい花を開き、咲き続ける。

 ミョウガの花は淡い黄色している。萼は短い筒状。花弁は基部で合着した「ろうと状」で、上方でのみ3裂している。花中で最も目立つのは花の下半分を占める純白の唇弁だが、実はこれは雄しべが変形したもので真の花弁ではない。雄しべの一部が花弁となるのはショウガの仲間に共通した特徴といえる。ミョウガの唇弁は浅く3裂するが、中央の裂片が大きく、側裂片は極端に小さい。その唇弁の上に雄しべと雌しべの束が乗っかるように突き出ている。

 ミョウガの花は清楚でもあり、鑑賞にも十分堪える。花序を未熟なうちに食べているだけではもったいないと思うことがあり、一度は栽培したいと思っているのだがまだ実現しないでいる。

 花ミョウガには「夏」ミョウガと「秋」ミョウガが区別される。夏ミョウガは早生の系統で6月から9月に花序を収穫する。一方秋ミョウガは中生・晩生の系統に属し、収穫は9月以降11月で夏系統に較べ収量も多い。

 ミョウガは学名をZingiber miogaといい、種小名は日本名ミョウガによる。最初の日本植物誌である『フロラ・ヤポニカ』を1784年に著したスウェーデンの植物学者ツュンベルクが提唱した。

 ミョウガは「メガ」という名で10世紀に成立した『本草和名』や『倭名類聚抄』に登場し、平安時代の宮中の食を記録した『延喜式』にも漬物としたことが記されている。日本では九州から本州に分布するが、生育地は人里に限られており、古くに中国から渡来したものが野生化したものと推測されよう。だが残念ながら中国でのミョウガの分布や生育状況などはまだよく判っていない。古い記録といえば『魏志倭人伝』にも茗荷の字があり、滋味としたと記録されているのだ。この文字が指す植物が今日のミョウガかどうか大いに検討に値しよう。

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Profile:

東京大学名誉教授
理学博士
大場 秀章 先生
(おおば ひであき)
ヒマラヤに花を追う-秘境ムスタンの植物- 2005年2月4日、大場秀章先生が中心メンバーの調査チームがネパール王国のムスタン地域で行った現地踏査の成果をまとめた著書「ヒマラヤに花を追う-秘境ムスタンの植物-」の出版を記念して、講演会が開催されました。
東京大学名誉教授。植物分類学の権威であり、ヒマラヤに生育する植物研究の第一人者の大場秀章先生が、植物に関する興味深いコラムを毎月お届けします。大場秀章先生には、当社の緑育成財団が支援している「ネパールムスタン地域花卉資源発掘調査」の中心メンバーとしてご指導いただいています。