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大場秀章先生の「草木花ないまぜ帳」
 
 
テーマ: サトイモ

サトイモ 夏の高温のせいか、今年は各地でサトイモが花をつけたらしく、新聞やテレビでも話題になった。ミズバショウやオランダカイウに似た仏炎苞をもち、私は鑑賞に供してもよいくらいの魅力を感じてしまった。着花は熱帯圏では普通のようだが、日本では開花はまれで、夏が高温だった年にはよく開花するといわれている。いろいろな風習やしきたりとの結びつきの大きいサトイモでは、他では想像できないような慣習にもかかわり、開花さえも嫌われるところもある。

 上記の植物はいずれもサトイモ科に分類される。春先の山野に多いマムシクサやテンナンショウ、それにザゼンソウ、畑で栽培されるコンニャクなどもサトイモ科のものである。
サトイモ科は熱帯と亜熱帯を中心に多様化した植物の1群で、2550種があり、105属に分類される。日本に自生するのはそのうちのわずか12属約50種である。

  サトイモは東南アジアの山地が栽培化の始まった起源地と推定される。サトイモは古くからアジアで広く栽培されている重要な作物で、タロ(taro)やココヤム(cocoyam)という名前が世界で広く通用する。日本には1万年以上前、イネの移入、おそらくそれに先立って渡来したと推定されている。最近近くまで焼畑でサトイモが栽培されていたところもあった。

  短く太い根茎(イモ)から多孔質で軟らかな茎のような葉の柄が同心円状に多数出る。柄は根元の方で互いに巻いて重なり茎状となり、あたかも茎が存在するかのようにみえる。葉身は卵形で、基部は深く湾入する。葉面には蝋物質を分泌するため、雨水などは葉上で水玉になる。

  花は花序の軸の部分が肥厚し、それに多数の花が密集してつく肉穂花序で、背後から大きな仏縁状をした苞葉が取り囲む。仏炎苞は中央の部分でくびれ、上方は淡い黄色で質は葉と同様だが、下方は緑色で質が厚い。

  夏の終わりから秋に地中に肥大した塊茎をつくる。これを掘り取り貯蔵し食料とするが、サトイモには古来からおびただしい数の栽培品種がある。塊茎には親芋が大形化し、小芋がほとんどできないタイプと、親芋は大きくならず小芋が多数できるタイプ、塊茎が竹状で匍匐するタイプなどがある。

  ヤツガシラ(八つ頭)は小芋が親芋から分離せず一体化した栽培品種で正月用の物に欠かせない。タケノコイミ(筍芋)は、塊茎が伸長しタケノコ状になるおので、小芋は少ない。葉柄も小さい芋がらとか芋茎と呼ばれ食用にする。

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Profile:

東京大学名誉教授
理学博士
大場 秀章 先生
(おおば ひであき)
ヒマラヤに花を追う-秘境ムスタンの植物- 2005年2月4日、大場秀章先生が中心メンバーの調査チームがネパール王国のムスタン地域で行った現地踏査の成果をまとめた著書「ヒマラヤに花を追う-秘境ムスタンの植物-」の出版を記念して、講演会が開催されました。
東京大学名誉教授。植物分類学の権威であり、ヒマラヤに生育する植物研究の第一人者の大場秀章先生が、植物に関する興味深いコラムを毎月お届けします。大場秀章先生には、当社の緑育成財団が支援している「ネパールムスタン地域花卉資源発掘調査」の中心メンバーとしてご指導いただいています。