大場秀章先生の「草木花ないまぜ帳」 |
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テーマ: バーベナ |
今年の東京は桜(ソメイヨシノ)は咲いたものの何となく寒い。とくに夜の冷え込みがきびしい。そんな日が続くと地球の温暖化は本当かと思われる人もいるにちがいない。しかし、温暖化は気候の変化のことであり、日々の寒暖晴雨の気象の振幅とは別だ。全国的にソメイヨシノの開花が早まっているのは温暖化と関連している。 温暖化が進めば、生育に高温が必要な熱帯や亜熱帯の植物の北方での栽培を可能にしてくれるが、一方で九州などの暖地での温帯系の植物栽培は難しくなると予想される。東日本では霜よけが必要なバーベナのような草花は、いずれ霜よけの必要もなくなり、栽培は今以上に楽になるかもしれない。 ビジョザクラの名もあるバーベナは、自然界には存在しない複雑な交配で誕生した園芸植物だ。その主な交配親となったのは、インキッサ種(Verbena incisa)、ペルヴィアナ種(Verbena peruviana)、フロギフロラ種(Verbena phlogiflora)、プラテンシス種(Verbena platensis)の4種で、いずれも南米産の野生種である。 バーベナはクマツヅラ科クマツヅラ属(Verbena)に分類される。この属には200もの野生種があるが、そのほとんどがアメリカ大陸の熱帯から温帯にかけての地域に分布している。ユーラシアに産するのは数種で、そのひとつクマツヅラ(Verbena officinalis)はヨーロッパから日本にいたる広い範囲に分布する。 バーベナは本来は多年草だが、園芸上は一年草として扱われることが多い。全体に細かい毛が生える。断面は四角形になる茎は、下方は地上をはうが、上部は立上がり直立する。葉は茎に対生してつき、披針形あるいは長楕円形で、長さは5~10cmになる。 花は直径が2.5cmにもなり、茎頂から出る散房状また穂状の花序に群がりつく。芳香にも恵まれる。花冠は下方が筒状で上方が平開する高盆状あるいは漏斗状で、筒部の頂部にあたる喉のところに白または黄色の副花冠を生じるものもある。花色は緋、赤、ピンク、紫、紅紫、藤色、黄色、白などきわめて多彩だ。 バーベナは、通常の鉢植えだけでなく、ハンギング・バスケットにもよく、また花壇や庭植えにも適していて、多数の栽培品種が作出されている。 青紫色の花色が魅力の'ブルーラグーン'、それに白色の目が入る'ロマンス・ヴァイオレット・ウィズ・アイ'、鮮やかな緋色の'クォーツ・スカーレット'、ピンク、赤、白の花色が2:1:1の割合で混生する、'ヴェスタ・ピンク・ミックス'などは、町中の園芸店でよく見かける栽培品種である。 |
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