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大場秀章先生の「草木花ないまぜ帳」
 
 
テーマ: アスパラガス

アスパラガスアスパラガスには独特の風味があり、タケノコ同様に春に店先に並ぶのを楽しみにしてきたものである。流通が進んだおかげで春から初夏の野菜だったアスパラガスも通年、店先でみかけるようになった。

食用とするアスパラガスは、もともと日本にも自生するキジカクシという植物に類似していたことからオランダキジカクシという名が授けられた。また、雰囲気や外観の似寄りからマツバウドなる名が与えられたこともある。

Asparagus officinalisが学名だ。属名Asparagusは植物(多分アスパラガス)をさす古いラテン語名であるが、その語源は定かではない。種小名のofficinalisは薬用のという意味で、本種が強壮剤や利尿剤などに用いられたことに因む。

食用とするアスパラガスはヨーロッパと西アジア原産で、広い範囲で食用に供されてきた。ヨーロッパでは人気で茹でて食べるための専用の茹で器があるくらいだ。

このアスパラガスは明治時代に北海道開拓使を通じ日本に伝わった。ヨーロッパ各地やアメリカ合衆国で改良が進められたが、開拓使が導入したのは合衆国で改良されたものだった。

アスパラガスの栽培品種は茎が緑色になるグリーン・アスパラガスと軟白して利用するホワイト・アスパラガスの2系統があり、日本では最近はグリーン系の需要が大きい。とくにグリーン系での品種改良は急速で、毎春店先で新しい栽培品種が登場の有無を確かめるのが楽しみなほどである。

ホワイト・アスパラガスは主に缶詰に利用されるものだが、近年ヨーロッパから白色で、太目の茎をもったアスパラガスがホワイト・アスパラガスの名前で輸入されている。これは缶詰などのホワイト・アスパラガスとは別種で、学名をAsparagus albus(albusは白いという意味)という、地中海西部原産の植物である。とくにベネルクス地域からフランス、スペイン、イタリアなどでは春の野菜として珍重され、生ハム巻きなどにして食べる。最近は日本でもこれが栽培されている。

アスパラガス属の植物には、シノブボウキなど切り花や鉢物用の観賞植物として利用される種がある。これらの多くは南アフリカ原産で、一見すると茎に細かく分裂した‘葉’があるようにみえる。食用にするアスパラガスも新茎を刈り取らずに成長させれば、シノブボウキなどの観賞用のアスパラガスに似た細かく細裂した‘葉’を繁らせる。

なぜ葉とは書かずに、‘葉’としたか説明したい。それは一見、葉のごとくにみえるものが、実は葉ではなく茎だからである。シノブボウキにも食用とするアスパラガスにも本ものの葉はみられない。ただ食用アスパラガスでは食用とする若い茎の上部に苞葉と呼ぶ、変形して鱗片状になった1種の葉が密生して着いている。またそれよりも下方にもまばらに付着している鱗片も変形した葉だ。アスパラガスの仲間は140種ほどあるが、分布の中心は南アフリカなどの乾燥地である。強度の乾燥気候下でアスパラガスの仲間の植物は、からだからの水分の蒸発散を防ぐために、葉を失ったのだろう。光合成を行う葉には気孔と呼ぶ小さな孔が無数にあり、体内の水がそこから逃げ出しやすい。扁平な葉に代わり葉よりも表面積の小さい茎で光合成を営むようにからだのプランを造り変えたのがアスパラガスの祖先だったのだろう。

アスパラガスのように葉を失った植物はサボテンの仲間やナギイカダなど結構多い。




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Profile:

東京大学名誉教授
理学博士
大場 秀章 先生
(おおば ひであき)
ヒマラヤに花を追う-秘境ムスタンの植物- 2005年2月4日、大場秀章先生が中心メンバーの調査チームがネパール王国のムスタン地域で行った現地踏査の成果をまとめた著書「ヒマラヤに花を追う-秘境ムスタンの植物-」の出版を記念して、講演会が開催されました。
東京大学名誉教授。植物分類学の権威であり、ヒマラヤに生育する植物研究の第一人者の大場秀章先生が、植物に関する興味深いコラムを毎月お届けします。大場秀章先生には、当社の緑育成財団が支援している「ネパールムスタン地域花卉資源発掘調査」の中心メンバーとしてご指導いただいています。