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大場秀章先生の「草木花ないまぜ帳」
 
 
テーマ: オミナエシ

オミナエシ東京オリンピックの頃は、都心から30分も電車に乗れば、台地や丘陵地にはいたるところに雑木林があり、その間には水田が広がっていた。散策も楽しめたが、私は特に旧盆を境に秋の気配が濃厚となっていく頃の散歩が好きだった。当時はまだ、秋の七草のすべての種に接することができたのである。今ではフジバカマとキキョウは全国レベルで、絶滅が危惧される種に指定されている。何と様変わりしたものか。


秋の七草のひとつ、オミナエシは東アジアに広く分布し、日本でもほぼ全土に生える。ロシアの沿海州を訪ねた折に、いたるところに群生するオミナエシをみた。高さも人の背まで迫り、日本のものよりも強壮だったことを思い出す。


オミナエシは一説によると「女飯」の意味で、黄色い花を粟飯に例えたものという。「オミナ」の語は女人から来ていて、漢字では女郎花と書く。白色の花をもち、オミナエシよりは雄々しく男性的な類似種のオトコエシと対をなす命名である。


オトコエシを除けば類似した植物はなく、名だけでなく、実物も容易に覚えることができた。帰化種のセイタカアワダチソウなどが爆発的に繁茂したためにだいぶその珍しいという印象は薄れたが、道端でみる日本の秋の花には紅紫色のものが多く、そんななかで淡い黄色の花が開くオミナエシは珍しくもあり、人目を引いた。


オミナエシは学名をPatrinia scabiosifoliaという。属名のPatriniaは18世紀にシベリアに旅行し鉱物と植物を採集した、フランスの鉱物学者ユージン・パトラン(Eugene L. M. Patrin)の名に因む。また種小名はマツムシソウに似た葉をもつという意味である。


オトコエシとともにオミナエシ科に分類される。この科の植物は集散花序につく小さな花をもち、萼片の一部が羽毛状になる特徴がある。


観賞を目的に改良された栽培品種がいくつかあるが市場ではめったにみない。


オミナエシは秋の七草という野生の趣きの強い多年草だが、ハヤザキオミナエシは6~7月に開花する文字通りの早咲き型である。タマガワオミナエシは高さ20?足らずの矮性型で鉢植えに適している。葉に斑がでるフイリオミナエシは、一般に成長が悪く栽培が難しいという。





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Profile:

東京大学名誉教授
理学博士
大場 秀章 先生
(おおば ひであき)
ヒマラヤに花を追う-秘境ムスタンの植物- 2005年2月4日、大場秀章先生が中心メンバーの調査チームがネパール王国のムスタン地域で行った現地踏査の成果をまとめた著書「ヒマラヤに花を追う-秘境ムスタンの植物-」の出版を記念して、講演会が開催されました。
東京大学名誉教授。植物分類学の権威であり、ヒマラヤに生育する植物研究の第一人者の大場秀章先生が、植物に関する興味深いコラムを毎月お届けします。大場秀章先生には、当社の緑育成財団が支援している「ネパールムスタン地域花卉資源発掘調査」の中心メンバーとしてご指導いただいています。