大場秀章先生の「草木花ないまぜ帳」 |
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テーマ: エリカ |
エリカの名はよく知られている。女性の名に用いられ、植物のエリカはラテン語の植物名、エリケ(erice)に由来するが、その語源はさらに古代の言葉にあるという。これは、地中海地方から西アジア、アフリカ東海岸に広く分布するツツジ科の木本エイジュ(栄樹、学名はエリカ・アルボレア、Erica arborea)のことで、やや乾燥した急斜面などに生え、樹林をなすことも多い。私もアラビア半島の紅海側を連ねるアシール山地やケニア山の中腹で目にしたことがある。 エリカの仲間、エリカ属にはおよそ860種がある。エリカの仲間を、英語ではヒース、ドイツ語ではハイデと呼ぶが、この属の本場はケープ地方を中心とする南アフリカで、そこには全種の75%を超える650種以上が特産する。 ヨーロッパの大西洋沿岸や北部の高地などにはエリカの仲間が群生するところが多い。荒涼とした独特の景観をもち、こうした荒野をもヒース、あるいはハイデなどと呼び、今でも人々の暮らしと密接に結びついている。ヒースで集めた蜜は冬も凍ることがないなど人気がある。 鑑賞用に栽培されるエリカには、ヨーロッパ原産のものと、南アフリカ原産のものがある。前者で日本で栽培されるのは、先のエイジュのほか、エイカンとも呼ばれるエリゲナ種(Erica erigena)がある。後者ではジャノメエリカ(Erica canaliculata)、ピンクや緋色の筒状の花をもつオーツィー種(Erica oatesii)、多数の小さな白色花が木を被い尽くすコットンヒース(Erica peziza)、鐘型でピンクの花をしたアワユキエリカ(Erica sparsa)などが代表的。 野生種の数が多いということは、それだけ多様な遺伝子資源に恵まれているということだ。この多様な遺伝子資源を用いて、想像を超えるような新しい園芸種登場の可能性も夢ではない。エリカは将来が楽しみな植物ともいえる。
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