2005/01 |
日差しはすこしずつ伸びてきていますが寒さは厳しさを増してきています。 でも木々の梢の先では春の準備が着々と進んでいるはず。 私達の心も、春への期待が高まるような気がしませんか。 秋に植えたムスカリは元気に葉を伸ばしてこれからの花に備えているし、土の下では球根たちもみんな舞台に出る日を待っています。 この時期って、春のエネルギーが土の中にも、梢の中にもみなぎっているような気がして、私もワクワクしてしまいます。冬枯れのこの季節に彩りを添えてくれる花、春を感じさせてくれる花を選んでみました。 嬉しい春はもうすぐそこに来ていますよ。
シロワビスケ (Camellia wabisuke cv. Wabisuke)
この季節に彩りを添えてくれるのが、山茶花やヤブツバキ、寒椿などツバキ科の花ですが国内でも2000種あるというツバキのなかで、このワビスケというのは変わり種で、ツバキとチャノキの交雑種と言われています。 ツバキ科ツバキ属、常緑高木のワビスケ。少し小さめの径4〜5cmくらいで一重の楚々としたこの白い花は、筒状に咲き、他のツバキと違って八分程度までしか開きません。 安土桃山時代から栽培されてきたツバキの中でも、特に茶人が好んで使ったため特別な存在となっています。他の殆どのツバキと違い、子房に毛が密生するものが多く、実は出来ません。 このシロワビスケはワビスケの中でも花が咲くのが早く、11月から3月まで咲き続けます。名前のワビスケは、「侘」と「数寄」を合わせた言葉だという説や、豊臣秀吉の"侘助"という名前の家来が朝鮮から持ち帰った花だからという説、"侘助"という名前の茶人が愛した花だとかいう説、はたまた千利休の下男の"侘助"が育てていたのだという説もあって、本当のところは私にもよくわかりませんが、八分咲きのまま花ごと散る潔さが、武人には好まれたでしょうし、つつましく控えめな花姿は奥ゆかしさや、侘び、寂の世界にも通ずる閑寂を楽しむこころを表して、茶花として好まれることがよくわかります。この花のように奥ゆかしく楚々としていたいものですが、がさつな私のこと、まだまだあの世界には遠い現実です。 ワビスケの仲間にはコチョウワビスケやベニワビスケ、イチコワビスケ、クロワビスケなど桃花から濃赤色花までいろいろあります。水はけの良い土で、日当たりから半日陰で管理します。花が終わった後で剪定しますが、夏以降の剪定は、花芽形成後なので樹形を整える程度にします。鉢植えの植え替えは春、秋か梅雨時に。
ミチノクフクジュソウ (Adonis multiflora Nishikawa et Ko. Ito)
春を告げる花として、また福寿という縁起のよい名前からもお正月の鉢植えなどで売られていますが、旧暦の新春に咲くことからガンジツソウとも呼ばれているこの花はキンポウゲ科の多年生草本。園芸種としては江戸時代から栽培されていますけれど野の花です。早春に黄金色の花を咲かせるフクジュソウは1種類かと思っていましたけれど日本のフクジュソウ属には、フクジュソウのほかにここに紹介したミチノクフクジュソウ、キタミフクジュソウ、シコクフクジュソウなどがあるそうです。 美しく、光沢のある黄金色の花は晴れた時に全開して太陽の熱を集め、昆虫を呼び寄せるのですって。蜜を出さないフクジュソウに虫が集まるのは花粉を食べたり日光浴をしたり、というリゾートのような環境を提供しているからということらしいのです。また多くの花は太陽を追いかけるそうで、輝くようなこの花を魅力的に思って盗掘する人が後をたたず、自生種は絶滅の危機に瀕しているそうです。野の花はそこで楽しむだけにしたいものですね。お正月用に買われた鉢をお持ちの方は、たいていの場合、根を切り詰めたり、巻き込んだりしたフクジュソウを浅植えにしていることが多いので、そのままにしておくと根の生育が悪いため枯れてしまうことになるかもしれません。 花後は、花柄を摘み取り、少し大きくて深めの鉢に、根鉢を崩さないように注意しながらそっと植え替えて上げましょう。用土は普通の花用培養土でOK。 フクジュソウは7月には休眠に入ります。地上部が枯れたら腐葉土などで根を保護し、水遣りもして根の乾燥を防ぐようにしてくださいね。また、花芽は晩秋からの寒さにあたることによって形成されますから、お正月に花を見たい方は室内に取り込む前にしっかり寒さに当てることが必要です。普通に外で管理すれば早春の開花になります。 |
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