2005/08 |
9月になっても、最近では残暑が厳しく、まだ夏が続いているといった印象ですが、それでも昔から「暑さ寒さも彼岸まで」といわれるように、お彼岸の頃になるとようやく、朝晩涼しい風も吹くようになる気がします。お彼岸に咲く花といえば「ヒガンバナ」でしょうか。またお彼岸に食べるものといえば「おはぎ」=「萩」ですね。今回はお彼岸にちなんでこの二つの花を見てみましょう。
ヒガンバナ(Lycoris radiata var. radiata Herb)
川の土手や田んぼの畔、またお寺さんなどに、お彼岸の頃に群生して咲くヒガンバナはとても印象的です。一般的にはマンジュシャゲと呼ばれていますが、これは梵語の「曼珠沙」から来たものだそうで、「朱華」の意味があります。それに華をつけて曼珠沙華、となりますが原産地の中国では石の多い地域に自生し、葉がニンニクに似ていることから「石蒜(セキサン)」と呼ばれるそうです。ただ、球根にはリコリンという毒があることからでしょうか、日本では「シビトバナ」「ヤクビョウバナ」などと呼ばれて長い間嫌われていたきらいがあります。でもこの毒は水溶性ですからよく水に晒すと澱粉が取れるのです。 墓地などでよく見かけますが、昔江戸の頃、飢饉などで食べるものがなくなると、お百姓さん達はこれを掘りあげて非常食としたり、薬用として使ったりしたと聞いたことがあります。畑で栽培するとお上に目をつけられるため、もしかしたら墓地に植えて、こわい呼び名をつけていたのはお百姓さんたちの知恵かもしれませんね。草丈は30cm〜50cmのヒガンバナ科の球根で、美しい花を咲かせますが、結実せず、分球によって増えます。花の後で細長い緑の葉が出、翌年の春に枯死し、また秋になると花茎が出て花を咲かせるため、花の時期には葉がなく、葉の時期には花がないわけで、「ハミズハナミズ( 葉見ず花見ず)」とも呼ばれるそうです。最近は園芸種も沢山あり、花色も様々なものが手に入るようになりました。海外では人気のこのリコリス、もっと楽しんで見ませんか。
ミヤギノハギ(Lespedeza thunbergii)
秋の七草のひとつで、日本の山野でよく見られます。萩といえば、山萩を指すそうですが、人家によく植えられているのがこのミヤギノハギ。マメ科の落葉低木で、1.5mほどの高さになり、枝が下垂して、秋に葉腋につける円錐花序に紅紫色の花を沢山つけます。この花は、宮城県の花だそうですが、着物の時代であれば、かんざしにして髪に飾りたいような、美しい姿の花ですね。日本海に自生するケハギから作られた園芸種で、 他の萩に比べて花の時期は長く、少し早い8月から10月まで長く咲きます。強健で日当たりのよい場所を好むハギは、秋に落葉した後、地際まできり戻します。株分けで増やしますが、適期は冬です。そういえば万葉集の中では、様々な植物が詠まれていますが、ハギを詠んだ歌が一番多いそうですよ。 さかんむりに秋と書く萩はいかにも秋らしいですけれど、もとは葉が、小さな歯牙のようだから「葉木」だったという説があります。あっ!ハギというので思い出しました。お彼岸に食べるもので、時々無性に食べたくなるもののひとつに、「おはぎ」があります。もち米のごはんを餡でくるんであって、絶妙の味。秋の彼岸の頃に食べる場合は萩の花が咲く頃だから「おはぎ」、春の彼岸に食べるのは、春の花の「牡丹」から「ぼたもち」といい、実際には同じ食べ物なんですね。今年の秋のお彼岸には、久しぶりにおはぎをつくってみようかしら。山ほど作って思いっきり食べようっと。 |
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